人間の脳と体は、人生の中で最も急速に発達する時期が0歳から3歳までの間だと言われています。この時期は「プレゴールデンエイジ」とも呼ばれ、運動能力だけでなく、知能、情緒、社会性など、さまざまな基本能力が形作られる重要な時期です。
この大切な期間に、どのような運動体験を積ませるかによって、将来の健康、学力、コミュニケーション能力までもが左右される可能性があります。
本記事では、なぜ3歳までの運動が重要なのか、どのような運動が脳と体に良い影響を与えるのかを、わかりやすく、かつ専門的に解説していきます。
なぜ3歳までの運動が重要なのか
神経回路の形成がピークを迎える
0〜3歳は、脳のシナプス(神経細胞同士のつながり)が爆発的に増える時期です。このときに多様な運動刺激を受けることで、神経回路が複雑に発達し、運動神経だけでなく、思考力、記憶力、感情コントロール力などの基盤が築かれます。
身体的な土台づくり
筋肉、骨、関節、神経系の発達もこの時期に急速に進みます。歩く、走る、跳ぶ、投げるといった基本的な運動パターンは、自然に身につくものではなく、実際に体を動かして初めて習得されます。この時期の運動経験の豊富さが、将来の運動能力に大きく影響するのです。
脳と体の発達に与える運動の影響
【脳への影響】
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前頭前野の活性化
運動によって思考、計画、自己制御を司る前頭前野が刺激されます。これにより、集中力や自己コントロール力が育まれます。 -
小脳の発達
バランスや運動調整を担当する小脳も、運動によって急速に発達します。これが、将来の運動の上達だけでなく、学習や記憶力にもつながります。 -
神経ネットワークの強化
運動による刺激で脳内の神経回路が複雑になり、柔軟な思考力や問題解決能力が育成されます。
【身体への影響】
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筋力と骨格の発達
適度な負荷を伴う運動により、健康な骨と筋肉が作られ、姿勢や運動能力の基礎が築かれます。 -
バランス感覚と協調性の向上
体全体を使う運動により、バランス感覚と体の各部位をスムーズに連動させる力が育まれます。 -
生活習慣病予防
幼少期から運動習慣を身につけることで、将来的な肥満や生活習慣病のリスクを減少させる効果も期待できます。
3歳までに取り入れたい具体的な運動
成長に合わせた適切な運動を取り入れることが重要です。
月齢・年齢別おすすめ運動
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0〜6ヶ月:寝返り・ハイハイの促進
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自由に寝かせて手足をバタバタ動かせる環境をつくる。
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腹ばいの時間を増やし、首・背中・腕の筋力を育てる。
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6ヶ月〜1歳:つかまり立ち・歩行訓練
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ソファや手すりを使った立つ練習。
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安全なスペースで伝い歩きを促進。
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1歳〜2歳:歩く・走る・登る・降りる
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公園などで自由に歩かせ、段差の昇り降りを体験させる。
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転びながらバランス感覚を育てる。
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2歳〜3歳:ジャンプ・ボール遊び・簡単な模倣運動
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両足ジャンプやボールを投げる、蹴る。
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「マネっこ体操」で大人の動きを模倣する遊び。
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家庭でできる運動遊びのアイデア
家庭で簡単にできる遊びを取り入れると、運動へのハードルがぐっと下がります。
取り入れやすい運動遊び
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室内サーキット遊び
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クッションや段ボールでトンネルを作り、くぐる、跳ぶ、這うなどの運動を組み合わせる。
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新聞紙ボール投げ
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新聞紙を丸めたボールを使って、投げたりキャッチしたりする。
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動物ごっこ
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「ウサギジャンプ」「ワニ歩き」など、動物になりきって体を大きく動かす遊び。
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ポイント
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安全第一:角を保護する、転倒対策をするなど、環境設定に注意。
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楽しく続ける:強制せず、子どもの「楽しい!」を尊重する。
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成功体験を積ませる:できたときには大げさなくらい褒める。
よくある悩みとその解決法
子どもが運動を嫌がる場合
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無理にやらせるのではなく、「遊び」の中に自然に運動を取り入れる。
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例えば、かくれんぼや鬼ごっこのように、動くことが目的ではない遊びを活用する。
忙しくて時間が取れない場合
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朝の5分間だけでもOK。リビングでジャンプ、バランス遊びなどを短時間で行う。
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通園・通学を「歩く時間」にするのも有効。
まとめ
3歳までの運動体験は、脳と体の発達に絶大な影響を与えます。この時期に多様な運動を経験することが、未来の運動能力、知的能力、社会性、健康的な体づくりにつながります。
特別な道具や広いスペースがなくても、家庭でできる小さな遊びを通して、子どもたちの「体を動かす楽しさ」を育てていくことが何より大切です。
今日からできることから始めて、子どもの健やかな成長をしっかりサポートしていきましょう!